僕は生徒に恋をした
別れたとはいえ、武内は山田の彼氏だった。

一緒にいるべきなのは明らかに俺ではなく彼だ。

保健の先生に頼まれたからとか、大人が付いていた方が安心だからとか、もっともらしい理由はいくらでも考えつく。
だけど、下心がある俺にはそんな立派なことは言えやしないよ。

「―――そうだな。
顔出してくるよ」

俺はそう言ってスポーツドリンクを武内に投げた。

立ち去り際に、一瞬山田の顔を見る。

彼女の目は、俺に側にいて欲しいと言っていた。

しかし彼女がそう口にできないのは、俺がさっきの理由を先延ばしにしたからに違いなかった。

俺の気持ちに確信が持てないから、山田は甘えることができないのだろう。

中途半端な態度が彼女を不安にさせているんだと実感する。
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