僕は生徒に恋をした
俺は教師である限り、山田を好きだとは言えない。

沈黙こそが答えだった。

「否定しないんだね」

佐々ちゃんはバカ正直なんだよ、と武内が笑う。

そんなの、俺が一番よく分かっていた。

「でもさ。
そんな風に、好きだって口にできなくてどんな意味があんの?」

彼の言葉が痛い。

「俺だったら、山田に何度だって好きだって言ってやれる。
人がいないとこで、こそこそ会う必要だってない。
あいつに寂しい思いをさせないよ」

分かっていた。

もしさっき、こらえきれずに山田への思いを伝えたとして。

付き合うことになったとして、今の俺には彼女を幸せにすることができない。
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