僕は生徒に恋をした
「―――嘘だ…」

山田はやっとのことで、それだけつぶやく。

「嘘じゃないよ」

俺は笑う。

「同情してない?」

「してないよ」

「悪い冗談じゃない?」

「違うって」

俺はどれだけ信用ないんだよ。
苦笑してしまうが、彼女をここまで疑り深くさせたのは俺自身だ。

俺は息を落ち着かせてから口を開く。

「本当はこの間、好きだと言ってくれて、すごく嬉しかったんだ」

気付けば山田は涙を流していた。

彼女の涙を拭いながら、もう二度と泣かせたくないと思った。

「泣くな」

俺は彼女を抱きしめる。

俺の手を離れた自転車が倒れたのが分かったけれど、気にもならなかった。

胸の中にすっぽり収まってしまうくらい小さい山田を抱きしめながら、このまま時が止まればいいのにと心底思った。
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