僕は生徒に恋をした
「先生、背高い」

そう言って振り返った山田の顔が近くて、俺は戸惑い、後ずさった。

「助かったよ」

俺は呼吸を整えながらそれだけ言い、どうしてこんなにも山田に苦手意識を感じてしまうのだろうと思った。

コップに汲んだ水で胃薬を流し込んだ俺を見て、山田が口を開く。

「先生、具合悪いの?」

「…大したことないよ」

まさか山田と手嶋先生の噂のせいだとは言えない。

山田はそれならいいけど、とつぶやくと、手にしていた絆創膏を膝に貼ろうとした。

「消毒は?」

「しみるからパス」

その言葉に、俺は笑いながら彼女の手から絆創膏を奪った。

「お前は子供か」

消毒液に浸けた脱脂綿が机の上にあったので、俺はピンセットでそれをつまみ、山田をソファーに腰掛けさせた。
< 23 / 374 >

この作品をシェア

pagetop