僕は生徒に恋をした
「どうした?」

俺は慌てて彼女に駆け寄る。

「先生、校内放送で呼ばれてたから。
ここなら会えるかと思って」

時計を見ると、放送があってからゆうに1時間は経っている。

「結構待っただろ」

「…うん。
でも顔見たら、待った時間なんてどうでもよくなっちゃった」

その言い方はずるい。

山田は俺の欲しい言葉をどうしてこうも簡単に口にしてしまうんだろう。

「玄関で待ってて。
一緒に帰ろう」

もう校内にはほとんど生徒も教師も残っていないはずだ。

あまり周りの目を気にしなくてもいいだろう。

俺がそう言うと、山田は嬉しそうに頷いた。

山田の背中を見送っていると、ふと背後に視線を感じて振り返る。

手嶋先生が職員室から出て来たところだった。
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