僕は生徒に恋をした
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翌日の放課後、まだ早い時間にも関わらず、山田が帰ろうとしているのを見かけて俺は声をかけた。

「山田?部活は?」

「あ、先生」

山田はいつもと変わらない笑顔で俺に駆け寄る。

昨日のことで、気まずくはなっていなかったようだ。

「椎名さんに今日、時間できたからおいでって言われたの。
これから行ってくる」

洋平の家はここから地下鉄で3つ先の駅にある。

大学時代から住んでるマンションで、俺も何度か訪ねたことがあった。

「帰ったら電話して」

俺は引き止めたい気持ちを堪えて、それだけ口にする。

「子供じゃないんだから、大丈夫なのに」

俺の気も知らずに笑う山田を見て、子供じゃないから心配なんだよ、と心の中でため息をついた。
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