僕は生徒に恋をした
「山田…」

その声に山田は顔を上げ、俺の顔を見ると、ふわっと笑みがこぼれていく。

「先生、すごいタイミングだよ」

山田は携帯電話を閉じて俺に笑いかけると、カウントダウンを始める。

「5、4、3、2、1…」

…。

「あれ?」

彼女の手に握られた小さなクラッカーは、なぜか引っ張った紐だけ抜け、不発に終わった。

山田は照れ笑いをし、

「まぁいっか。
お誕生日、おめで…」

そう言い終える前に、俺は彼女を抱きしめた。

山田の体はすっかり冷えきっていて、俺はせつなくてたまらなくなる。
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