僕は生徒に恋をした
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午後になってやっと山田の父親と電話が繋がったが、海外出張のために、すぐに帰って来るのは難しいと言われた。

困ったところで手嶋先生のことを思い出す。

最も早く話すべき相手なのに、後回しにしていた俺は、どれだけ冷静じゃなかったのだろう。

職員室で手嶋先生に昨日のことを話すと、彼はそうか、と驚いた顔をした。

「落ち着くまで、彼女の母親のところで様子を見てもらえればと思って」

「そうだな、その方がいい」

手嶋先生はそう答えた後、眉をひそめた。

「―――大丈夫だったのか?」

彼の言う意味が分からず、俺は一瞬黙る。

「ああ。
大した被害はなかったみたいで…」

「いや、そのことじゃなくて」

手嶋先生は首を振る。

「佐々本先生の家に雛を泊めたことが―――」

そのとき、俺は林原に肩を叩かれ、手嶋先生は黙る。
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