僕は生徒に恋をした
「俺、最低だな。
弱ってる山田に付け込んで」

私は首を横に振る。

「違う。
私が先生を信用しないのがいけないだけ。
私がこんなに不安がってなければ、きっと武内君はこんなことしなかったでしょ?」

武内君が優しい人だって分かってる。

「強がるなよ。
俺は佐々ちゃんのことも知ってる。
俺にだけは弱いとこ見せていいんだから」

武内君の言葉が優しすぎて辛い。

だって、私も限界だったから。
いくら先生がまだ私のことを好きだと言ってくれていても。
いくら春になったらまた付き合おうと約束してくれたとしても。

先生のその言葉には、確証がなかったから。

武内君がさっき言ったのは当たってる。

春になっても、先生に好きでいてもらえる自信なんてなかった。

心のどこかで、卒業と同時に、私と先生の関係は、まるで何もなかったかのように崩れていくんじゃないかと思ってた。

だからずっと不安だった。
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