僕は生徒に恋をした
「あれ、山田だったのか」

あのとき、目の前に立っていたのは、知らない生徒だった。

彼女の校章は一年生の色で、当時俺は他学年を担当していたから、面識もないのにチョコレートをもらうはずもないと思った。

だから俺は、誤ってばらまいてしまったチョコレートを拾ってくれたのだと信じて疑わなかった。

「拾ってくれてありがとう、なんて言われたら、本命だなんて言えないよ」

山田が笑って言った。

「どうりで」

俺は思わずつぶやいた。

「え?」

「いや」

俺はそう言って首を振る。

どうりで山田からチョコレートをもらった記憶がないわけだ。

他の生徒からのものだと誤解していたのだから。

「―――そういや去年は?
もらった記憶ないけど」

去年はもう山田を知っていたはずなに。
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