僕は生徒に恋をした
「…持ってくるの、忘れたの」

山田は恥ずかしそうにつぶやく。

その表情に俺は声を出して笑ってしまった。
やっぱり山田だ。

「一生懸命作ったのに、我ながら本当に間抜け…」

山田の照れ笑いがかわいい。

「チョコ渡すのに、二年もかかっちゃった」

「それ、食べたい」

俺が山田のチョコレートを指差すと、今?と彼女は目を丸くする。

もう校内にあまり人は残っていない。

やましいことをするわけでもないし、少しくらいならいい思いしたって許されるだろう。

いいけど、と山田はリボンを解き、箱を開けた。

中には少々いびつなトリュフチョコレートがいくつか並んでいる。

一つをつまむと、彼女は俺の口に運んだ。

「山田が作ったの?」

不安そうに顔を覗き込んでくる山田に俺は聞く。
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