僕は生徒に恋をした
彼女の隣に立ち、何が見えるのかと外を見回してみる。

山田は両手の指でフレームを作るようにしてそれを窓の外に向けた。

「高校生活、色んなことあったから。
景色をみんな覚えておこうと思って」

山田はそう言った後、指のフレームを俺に向ける。

「俺も思い出にされるのか?」

俺が苦笑すると、山田は首を振る。

「先生だけは思い出にしないよ」

山田は俺を見つめながら、ゆっくりと腰を下ろす。

窓際後ろから3番目、山田がかつて座っていた席だ。

「この席覚えてる?」

「ああ。
お前が林原にカレーをかけた日だろ」

俺がそう言うと、山田は時効だってば、と頬を膨らませた。
< 364 / 374 >

この作品をシェア

pagetop