僕は生徒に恋をした
家は近所だったが、今まで一度として学校以外で出会ったことはなかった。

どうして初めてが、関わりたくないと思ってからなのだろう。

「送るから、帰りなさい」

深い意味はなかった。

ここで会ったのが他の生徒でも俺はきっとそう言ったはずだ。
暴風雨の中、生徒を一人で帰すのは危険だから。
ただそれだけだ。

強風で傘をさすのも困難で、俺たちはほとんど言葉を交わさなかった。

だいぶ濡れはしたものの、無事に山田の家に着いた。

「先生に送ってもらうの、二度目だ」

「戸締まりに気をつけて」

俺がそう言って行こうとしたとき、

「先生…」

山田が何か言いかけた。
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