僕は生徒に恋をした
「ひどいんだよ。
教科書まるまる一冊、現代語に訳しとけって。
こんな膨大な量…」

林原の大人気ない仕返しっぷりに、俺は再び吹き出した。

それを見て、山田が頬を膨らます。

「笑いごとじゃないって。
先生手伝ってよ」

「無理無理、専門外」

俺は笑いながら首を振る。

そもそも、そんな難題を押し付ける林原もバカだけど、それをまともにやろうとする山田も相当だ。

「教員免許持ってるくせに」

「いいんだよ、数学の教師なんだから」

俺は山田の教科書などを片付けながら言った。

「もう本当に、帰れって。
林原には俺からも謝っといてやるから。
ちゃんと電気消して帰れよ」

そう言い残し、見回りに戻ろうとしたところで一瞬考える。

外は暗いし、女子生徒を一人で返すのは危険かもしれない。

俺は山田を振り返る。

「やっぱり、職員玄関で待ってろ。
校内の見回りが終わったら送って行くから」
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