僕は生徒に恋をした
先に中村が下を覗く。
俺も続いて見ると、どうやら山田が黒い絵の具をひっくり返したようだった。

「大丈夫ー?」

中村が思わず掛けた声に、山田は驚いて俺たちを見上げた。

山田は制服にも絵の具を飛び散らせていた。

中村が大変、とつぶやいて非常階段を駆け降りるので、俺はその後に続くしかない。

「これは染みになっちゃうかも」

中村が濡らしたハンカチで山田の制服を拭ってやる。

山田に会うのは、あの嵐の夜以来だった。

久しぶりに会った彼女は、相変わらずおっちょこちょいで、山田にしてみれば可哀相だが、俺は思わず笑ってしまう。

それを見て、山田は少し口を膨らませた。
< 75 / 374 >

この作品をシェア

pagetop