僕は生徒に恋をした
手嶋先生にだって幼い頃はあったのだから、当たり前だ。

失礼な質問をしてしまったと思い、俺が黙ると、手嶋先生が口を開く。

「俺はあんまり興味はなかったが、よく連れて来られた」

「―――ご両親に?」

「いや…」

「あ、兄弟か。
先生は面倒見がいいから」

俺が勝手に納得すると、手嶋先生は、そんなところだ、とつぶやいた。

そして、俺はふと疑問に思った。

手嶋先生は以前、一人っ子だと言っていた気がする。

しかしだいぶ前の記憶であやふやだし、他の誰かと勘違いしているかもしれない。

一応確かめておこうかと思ったとき、俺は誰かに声を掛けられた。

「佐々ちゃーん!」

俺は呼ばれた方を振り返る。
担任している生徒、男女五人ほどが俺に手を振っていた。
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