追憶〜逢いたい人へ〜

アイドル…

グラウンドに近づくにつれて、黄色い声が大きくなってくる。


そう…。

グラウンドは女子で囲まれていた。


『…やっぱりね…。』


私の思惑は見事に消し去られたのだった。


みんな勇目当てだ。

勇は我が校のアイドル的存在。

他校の女子生徒までもが校門に集まって黄色い声援を送っている。

芸能事務所のスカウトらしき人まで来ることもあった。


どんだけ人気があるのだろうか…

想像つかない…



私はため息をついた。

こんな人だかりでは勇と話すことは無謀だし、至難の技…


ガックシ肩を落とし、グラウンドに来たことを後悔しながら、体育館に向かおうとしたとき、私を呼び止める声がした。
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