追憶〜逢いたい人へ〜

少しして、勇が口を開く。

『じゃあ、今でも俺のこと好きか?』



『……好きになったらダメだと思ってる。』



『………。』



『ごめんね。…ありがとう。』



涙が勝手に出てきてしまった…


『……お前さぁ、誕生日ん時の約束覚えてるよな?』


私は黙って頷く…



やっと少し笑った勇は、


『じゃあ、俺の誕生日の夕方、またあの場所にきて!』



…えっ…?

声にもならなかった私は、顔を上げて勇を見つめた。


『…そんとき、もう一度好きかどうか聞くから。頼むから、ちゃんと考えて!』


思いもよらない勇の言葉…





『…なんで?』



『…ん?』



『なんで私なの?もっと…、もっと勇には相応しい人がいるでしょ?』



『…前にも言ったじゃん。理由なんてない。俺に相応しいのは…千代だと思ってるから…』



私が返事に困ってると、


『じゃあ、また誕生日に!絶対来いよ!』



そう言った勇はグラウンドの人混みに消えていった。


< 100 / 297 >

この作品をシェア

pagetop