追憶〜逢いたい人へ〜
『乗って!』


勇は私にヘルメットを渡す。


『どうしたの?これ…』



何がなんだかさっぱりわかんない……




エンジンをきった勇は、


『普通のデートしたいって言ったじゃん!』


満面の笑みで私を見ていた。



『だからって……もしかしてこれ勇の?』



頷きながら勇は、

『免許取ったんだ。早く取りたくて…だからなかなか会えなかったんだ…。』



『もう!なんか騙された感じ…。』


『膨れるなよ!これがあれば少し遠くまで行けて、普通のデートみたいだろ?
千代と普通のデートしたかったんだよ…』



『勇は何処にいても有名人なんだから、遠くまで行ったとしても変わらないよ。』


って可愛くなさすぎだ…


素直に喜べばいいのに…



『とかなんとか言っちゃって…ほんとは嬉しいんだろ?』


勇はニヤニヤしながら私の顔を覗き込んだ。



……図星……………



こんなに勇に想われていたと思うと、恥ずかしさと嬉しさでいっぱいだった……




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