追憶〜逢いたい人へ〜
辺りはもうすっかり薄暗い…
顔を近づけないと見えないくらい……
風が冷たくなって“ブルッ”と震えた。
『冷えてきたな…』
そう言って勇は私を引き寄せ包むように肩を抱いた…
勇の温もりが冷えた私の体に、心に染み渡った……。
もう会えないかもしれない…
そう思ったら、温もりさえも愛しくて…寂しい……
言いたくないけど、
『もう戻らないとダメなんじゃない?』
勇から少し離れて言った。
『…もう少しだけ…だめ?』
『だめ…じゃない…。』
『じゃあもう少しだけ…』
そう言ってまた私を引き寄せ抱き締めた。
抱き締める腕に力が入る…
そして……
また長いキスをくれた…。
これが勇との最後のキスだった……。