追憶〜逢いたい人へ〜
『待てって!』


小走りで追い付く孝雄はまだ笑ってる…。




…もう!恥ずかしいじゃん!!



『…ちゃんと言わないからだろ?』



孝雄はまた暖かい手で私の手を包み込んだ。



さっきはホッとしたのに、今度はドキッとする…。



びっくりしたせいで、つい離しそうになる…


でも、孝雄はギュッと握って離さなかった。








気が付けば、事件の場所が目の前…。







一瞬、躊躇する私…。



孝雄の手に力が入る…




孝雄を見た。


だけど真っ直ぐ前を向いてゆっくり私の手を引いている…。



孝雄の手は、更に強く私の手を握る…。



大丈夫………。



孝雄の手からそう伝わってくるようだった…。




…うん。大丈夫…!孝雄がいてくれるから……。





私も孝雄の手をギュッと強く握り返した…。










無言であの場所を通過…





どんどん遠くなる恐かった場所…




私は孝雄のお陰で恐かった事件の場所を通りすぎることができた……。








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