追憶〜逢いたい人へ〜
藤沢駅から江ノ電に乗り換えた。



江ノ電に初めて乗る…



…観光地が近くにあること忘れてた…



地元だからあまり感心なかったかも…



『もしかして、乗るの初めて?』



『うん。初めて!楽しいね!』


窓から海の景色が流れる…


江ノ電は私がいつも通学に使っている電車とは違って、ゆっくりのんびり走っているように見えた…



『毎日乗ってると、あまり楽しいとは思わないけど…スピード遅いし…』


…そっか。孝雄は毎日これに乗って通学してるんだ…


この景色は毎日孝雄が見ている景色なんだ…



そう思っていると、孝雄がいつも降りる駅を通過…



そして、外が見えるように座り直した孝雄は、


『ここからは初めて見る景色なんだ…』


『えっ?そうなの?』



『あぁ…これで江ノ島まで行くの初めてなんだ。』



『じゃあ、孝雄も私と同じだね!』



そう言うと孝雄は優しく笑い、膝に乗せていた私の手を上から包み込むようにそっと重ねた…








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