追憶〜逢いたい人へ〜
『……。だからか…』
何かを悟ったかのようだった。
そう…、私が海に来たくなかった理由…
全部を話さなくても分かってくれた…。
『…悪かった。』
孝雄は繋いでいた手を強く握りしめた…。
『もういいの…。二度と行かないって決めたあの場所を見ることができたから…。……うん。なんか気持ち落ち着いたかも…ありがとう…孝雄。……でもなんか不思議……。』
孝雄は黙ったままあの場所を見つめていた…。
私が不思議に思ったこと…
それは、あの場所で見る海も、この江ノ島から見る海も、違う場所からなのに同じ…。
どんな時でも私を迎えてくれる…
…勇……
とても忙しそうだね…
この海は変わらずに綺麗だよ…
勇の安らぎは私じゃなかったんだよ…
この海だったんだよ…
瞼を閉じると現れる、眩しい笑顔の勇に伝えた……。