追憶〜逢いたい人へ〜

『……。だからか…』

何かを悟ったかのようだった。



そう…、私が海に来たくなかった理由…



全部を話さなくても分かってくれた…。





『…悪かった。』


孝雄は繋いでいた手を強く握りしめた…。



『もういいの…。二度と行かないって決めたあの場所を見ることができたから…。……うん。なんか気持ち落ち着いたかも…ありがとう…孝雄。……でもなんか不思議……。』




孝雄は黙ったままあの場所を見つめていた…。




私が不思議に思ったこと…

それは、あの場所で見る海も、この江ノ島から見る海も、違う場所からなのに同じ…。



どんな時でも私を迎えてくれる…






…勇……


とても忙しそうだね…


この海は変わらずに綺麗だよ…



勇の安らぎは私じゃなかったんだよ…



この海だったんだよ…





瞼を閉じると現れる、眩しい笑顔の勇に伝えた……。








< 180 / 297 >

この作品をシェア

pagetop