追憶〜逢いたい人へ〜
孝雄の誕生日、三日前…
カメラはまだ鞄に眠っている……
朝は寝起き顔で、孝雄はもっと眠たそうにしてるから帰りに切りだそう…
そう決意して家を出た。
玄関を出て少しの所で孝雄が待っている…
あの事件から毎朝、必ずそこで待っていてくれる…
孝雄の姿を見つけると、心拍数が上がり、更に身体が火照る…
あと、今日も会えた…という安堵感……
すごくホッと安心する……
毎朝、孝雄がするちょっとした優しさ…
私を必ず歩道側を歩かせる…
車が通るから危ないってことは勿論だけど、多分、あの事件があったから…
そして必ず手を繋ぐんだ…
安心する温かくてゴツゴツした大きな手で…
つい、繋いだ手をじっと見ていたら、孝雄は、
『嫌ならやめるけど…。千代は注意力散漫で、危なっかしいから…』
って言っていた。
言葉は少しぶっきらぼうで、素っ気ないけど孝雄の優しさなんだ…