追憶〜逢いたい人へ〜
私はいつのまにか、その場に座り込んでいた…。
行き交う人たちは不思議そうに見ているけど、全然気にならなかった……
孝雄が来ない……
孝雄に会いたい………
走る足音が近づいてくる…
誰か、遅刻しそうなのだろうか……
そんなのはどうでもいいのに…
足音が私の前で止まった…
辛そうな息遣い……
私は顔を上げた……
冬なのにうっすら汗をかいて、“ハァ…ハァ…”肩を上下に激しく揺らしている孝雄がいた。
私は自然と涙が零れた…
何も言えない私の手を孝雄が引っ張ってまた走り出す……。
…何? …………
何も言わず走る孝雄に付いていくしかなかった…。