追憶〜逢いたい人へ〜
泣きじゃくる私に、孝雄は、
『ごめん…。』
と謝るだけ……。
声にならない声で、
『なんで…いなかったの?』
聞いた。
少し間が開いてから、
『……ごめん。寝坊…』
…私は直感的に“嘘”のような気がした…
だけど、必死に謝る孝雄に問い詰めることができなくて、
『明日の約束、ちゃんと守ってね…』
としか言えなかった…。
抱き締める力を強くした孝雄は、また少し間を開けて、
『…あぁ…わかってる…』
そう言った…。
どのくらい抱き合っていたのか…
コーヒーもミルクティも温くなっていた…。
『温くなっちゃったな…』
私からそっと離れて笑いながら呟く…
私もつられて笑った…。
『千代は笑った顔が一番いいよ…』
寂しげな顔をした孝雄は、私にそっとキスをした…
孝雄の唇は酷く冷たかった…