追憶〜逢いたい人へ〜
…理由
…これ…渡せなかったな…
私の手にはあの最高の笑顔の写真とお守り…
せめて、写真だけでも渡したかった…
“好き”って言い合えなかったけど、お互いが想いあっているという証のような写真……。
孝雄にも持っていて欲しかった……。
せめてそれだけでも……
そう思った私は、塾で一緒だった共通の友達に頼んでみることにした…
共通の友達、みんなに“てっちゃん”と呼ばれている、佐々木哲哉…
偶然、久しぶりに再会したてっちゃんにこんなことを頼むのは気が引けてしまったけど、もう手段は頼むしかなかったから…
簡単に事情を説明してお願いしてみた…。
『男の俺も孝雄の母ちゃん、恐いもんなぁ…』
そう呟いた後、ニコッと笑って私の頭に“ポンポン”と手を乗せた。
『俺がなんとかしてやるよ…』
私の我が儘な頼み事を快く引き受けてくれた…。