追憶〜逢いたい人へ〜
『勇こそ…元気そう…。』

店には立ち読みしている人が数人いるだけ…


雑誌に夢中で、ここに超有名人がいるなんて気付きもしない…



『…なぁ…少し話せないかな……?』


想いもよらない勇の言葉にかなり動揺した私は、間違えたタバコを渡してしまった…。


『これ違うよ。ライトじゃなくてスーパーライトだよ…!』



よく見るとほんとに違う…


余計に動揺する…



『バイト、何時まで?待つよ。』


そう聞かれてハッとする。


まだ私は来たばかり…


今日は夜10時まで…


そんなに待ってもらえない…

こんな超忙しい、超有名人に…


しかも、何話していいか分かんない…


『今日は10時までだから…勇だって忙しいでしょ?無理だよ…。』


…そう言えば、勇は帰るだろうと思った…


でも勇は、


『そんな冷たいことサラッと言うなよ。…じゃあ、10時にまた来るから…』



お金を置いて去ろうとした…

何百円のものなのに1万円も…


『ちょっと、勇!お釣り!』



勇は振り返って、


『10時に取りに来る…。それまで千代が持ってて!』


そう言って店を出ていった…




< 236 / 297 >

この作品をシェア

pagetop