追憶〜逢いたい人へ〜
帰る方向が同じこともこの時初めて知った。


孝雄が自転車で私の少し前を走っている。

私は一定の距離を保ちながら後ろを走っていた。


途中、大きな交差点がある。

この交差点の信号は変わるのがとても長い。
だから歩きの場合は歩道橋を使わないと時間がもったいないのだ。

案の定、この交差点の信号に引っ掛かってしまった。
普段歩きだったら私は確実に歩道橋を使うのだが、今日は自転車。

歩道橋が使えない。

だから、孝雄に追い付いてしまった。

一定の距離を保っていたくせに無意識に隣に並んでいた。


なんでかな…

孝雄と話がしたかった。

仲良くなるキッカケが欲しかったのかもしれない…

なのに並んだ瞬間、照れ臭くなって俯いた。

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