追憶〜逢いたい人へ〜

私の肩から緊張が解けた。

後ろを振り返ると、孝雄はもう友達と肩を組んでいた。



…なんだったんだろう…。
孝雄にしては、珍しい行動だ…。

逆ならあり得るけど…


旅は人の行動まで変える力があるのか………???




誰かに呼ばれた気がして振り返る…。


『お〜い!千代〜!なんでそんな隅っこにいるんだよ!』

勇が私に手を振っていた。

『脇役は端っこにいるもんでしょ!』


横目で孝雄を気にする…。

孝雄は気付いていないのか、こちらを振り返ることはなかった。


勇に声をかけられて嬉しいはずなのに、何故か孝雄が気になって素直に喜べない自分がいた。



躊躇している私に勇は、

『なんだよ〜。一緒に撮ろうぜ!』

そう言って、私を真ん中に座らせ肩を組んだ。



孝雄が気になったけど…


やっぱり、嬉しかったから精一杯の笑顔をカメラに向けた。
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