追憶〜逢いたい人へ〜
話終わると、女子は全員青ざめていた…。


私はというと、毅然としていた。

何故なら……



ずっと耳をふさいで、ほとんど聴いちゃいなかったから…。



でも、微かに聞こえた話は、マトモに聴いていたら、強がってなんかいられず泣いちゃってたかも……





『女は素直に怖がってた方がかわいいのに…。』



いきなり勇が私の顔を覗き込んだ…。



思いの外、至近距離…



顔が近すぎて、固まった…。



緊張で、さっきの怖さもぶっ飛んだ…。


思考回路がめちゃくちゃ…


だからかな…

何故かこの時、後輩達のなかなか出番のなかったカメラたちを思い出した。



『あっ!頼みがあったんだ!写真撮らせて!』


後退りなから言った。


『なんで…急に?』



『後輩に頼まれちゃって!』


さっきまで笑っていた勇の顔が険しくなった…。



でも、それは一瞬のこと…


険しかった顔がいつもの勇の笑顔に戻った。



『えー!事務所通してからにして〜!』


ってオヤジギャグかいっ!!!!



そして、



『お前の頼みならな…』


勇はOKしてくれた…。




胸が“チクン”と痛む…。



なぁんだ…


引き受けてくれちゃうんだ…


心の何処かで“いやだ!”って言ってくれることを期待していた私がいる…。


私が“撮らせて!”ってお願いしたのに…


矛盾………




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