追憶〜逢いたい人へ〜
『ファンからは何もされてないのか?』


心配そうな顔をしている。



…心配しててくれたんだ…


『うん…。大丈夫…。まぁ…陰口くらいかな…。』



『そっか…。』



暫く沈黙……



『まだ、古田に塾の時間教えてないのか?』



『えっ…?あぁ…、うん。』




勇は、夜の方が人目につかなくて会いやすいから塾の曜日、時間を教えてほしいって言われてたけど……


私は教えなかった…




だって、勇に会うよりも、私にとって孝雄とのこの時間のほうが大事に思っていたから……。





『じゃあ、まだ一緒に帰ってても大丈夫だな…。』


ボソッと孝雄が言った。





…今考えれば、孝雄の言動や行動、どれをとっても、私のことを想ってるってわかる…。



でも、中学三年生の幼すぎた私は、今目の前にある問題しか見えてなかった…。



勇っていう問題しか……





心配してくれて嬉しい…

ただそれだけで、その嬉しさの奥にある深い想いには気付こうとはしてなかった…









< 89 / 297 >

この作品をシェア

pagetop