キスはおとなの現実の【完】
「ありがとうございました。ぜひ、またきてください」

カズトさんは笑顔でわたしにそういった。

またきてください、か。

帰り道を歩いているとき、そのせりふがずっと耳に残っていた。

たしかにこれでは、千円の借りなどぜんぜん返したことになっていない。

残りは小銭で八百円。

お札よりも重くなった気がするのは、わたしの気のせいだろうか。
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