キスはおとなの現実の【完】
本来あまり社交的ではないわたしは、人のすくない時間帯のほうが落ちつける。

営業の報告を終えると会社ですこし雑務をして時間をつぶし、それから電車にのるようになった。

家と会社の往復に、ビール一本ぶんのより道という予定がくわわるだけで、ほんのちょっと気持ちによゆうができたような気がしてくる。

これくらいのむだづかいなら、家計にひびくこともすくない。

千円の借りがあったので、五回目まではただだったということも気持ちのゆとりにつながっていた。

わたしの日々はなにも変わらず、とどこおりなく進行していた。
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