キスはおとなの現実の【完】
プライベートが充足しているとはいえないが、缶ビール一本のたのしみで、不思議ときつい仕事ものりきれるようになる。

営業まわりの電車のなかで大上先輩がいう。

「袴田。最近ずいぶんと気合いはいっているな。以前にも増して仕事への打ちこみかたが半端じゃない」

「悪いことですか」

わたしはたずねる。

大上先輩は目じりにしわをよせて笑う。
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