キスはおとなの現実の【完】
「なるほどな」

午前中より髪を乱した先輩は、目じりのしわを深くしていう。

「悪循環ていうやつか。たしかに今がっつりくったら、晩めしはどうでもよくなっちゃうよな。その気持ち、おれもわかる。家でちゃんとめしをくわないと、かみさんに叱られるんだ」

既婚者の大上先輩は、ひとり暮らしのわたしに同意しながら、カルビ焼肉弁当をがつがつかきこんでいる。
説得力がまるでない。

しかもここは駅のホームのベンチのうえだ。
なんというか、恥ずかしい。
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