キスはおとなの現実の【完】
わたしはしわくちゃのスカートに涙が落ちないよう、奥歯をぐっとかみしめた。

担当男性がソファを立ちあがりながらいう。

「こちらこそ、お寒いなかご足労いただき、ありがとうございました」

それが解散の合図になった。

大上先輩も担当男性に続いて立ちあがる。
ふたりは交渉後のあたりさわりのない雑談をしながら応接室をあとにする。

わたしは奥歯をかみしめたまま、そんなふたりのあとに続き市橋商事のフロアを抜けた。
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