キスはおとなの現実の【完】
市橋商事であれほど大声をだしてしゃべったあとだ。
口のなかはからからに渇いていた。
けれど、わたしののどはなにも受けつけてくれそうになかった。

たべものも、のみものも、くやしさも、苦しさも、わたしののどをとおってくれない。

もしのみこんでしまえば、いくぶんかはらくになるかもしれないけれど、同時にわたしは、二度とおとなになんてなれないような気もした。
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