キスはおとなの現実の【完】
胸と口いっぱいのなさけなさが、いき場をなくしてただただそこに消えることなく居座っていた。

くいしばった歯をゆるめてしまえば、うちにもいけずに口のなかでしずかに座る感情が、そとにむかって大爆発を起こすだろう。

そうなれば目から涙があふれてきそうでこわかった。

口とおなじようにからからに渇いてうつろになった心のなかは、どこまでも空白で、このままひからびてしまうのかなとぼんやり思った。
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