キスはおとなの現実の【完】
かみしめていたはずの奥歯から力が抜け、一文字に結んでいた口もとがまぬけにゆるむ。

カズトさんのいつもと変わらぬやさしい笑顔に見つめられ、わたしのダムはいとも簡単に決壊した。

「わたし……」

口をあけると今までずっと鎮座していたくやしさや、なさけなさが大爆発を起こす。

目からは理由なく涙があふれ、その場でわたしはしばらく泣いた。
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