キスはおとなの現実の【完】
わたしは泣きながら笑ってしまった。
ステンレスのカウンターには、涙とよだれと鼻水をたらしたうえ、化粧のただれたなんとも奇妙な泣き笑いのおばけがいる。
「あっ、袴田さん。はじめて笑った」
わたしを見つめてうれしそうにカズトさんがいう。
「おれ、はじめて袴田さんを見たときに思ったんです。この人、むりして笑っているんだなって。それで毎日顔をあわせるようになって、それでもまだむりやりな笑いしか見せてくれなくて。だからいつか、ちゃんと心から笑ってほしいなって思うようになったんです」
わたしはわけがわからず、バドワイザーをにぎったままへんてこな表情の顔をあげた。
ステンレスのカウンターには、涙とよだれと鼻水をたらしたうえ、化粧のただれたなんとも奇妙な泣き笑いのおばけがいる。
「あっ、袴田さん。はじめて笑った」
わたしを見つめてうれしそうにカズトさんがいう。
「おれ、はじめて袴田さんを見たときに思ったんです。この人、むりして笑っているんだなって。それで毎日顔をあわせるようになって、それでもまだむりやりな笑いしか見せてくれなくて。だからいつか、ちゃんと心から笑ってほしいなって思うようになったんです」
わたしはわけがわからず、バドワイザーをにぎったままへんてこな表情の顔をあげた。