キスはおとなの現実の【完】
「いつも心にヴェールをかけて、そっけないけど、いつかちゃんと笑わせてやろうってひそかに思っていたんです。けっこう壮大な夢でしょ」

人の表情を夢に持つとは、なんとも失礼な男である。
だいいち、わたしがただ笑うだけのことが壮大な夢だというのは、なんともひどいいいぐさだ。

「それで……」

わたしがかわいげのないコメントを心のなかでつぶやいていると、カズトさんは言葉を続けた。
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