キスはおとなの現実の【完】
唾液に混ざる、鼻水によだれに涙にビール。

どれひとつとっても決してロマンチックなものではない。

けれど。

わたしはそのなかに、わずかななにかを見た気がする。

とらえようのないそのなにかを、わたしは探す。

カズトさんにならうように、舌をのばして深くからめる。

べったりふれあうたがいの舌は、ぬるぬるしていて、すごく苦くてしょっぱくて、まるでおいしくない現実の味がした。
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