キスはおとなの現実の【完】
わたしがカズトさんの味を感じるように、口のなかのわたしの味はカズトさんにも、きっとつたわっているのだろう。

口角にむかって移動するカズトさんの舌を追いかけるようにわたしも流れこむ塩味の涙に舌をのばした。

そして、わたしとカズトさんは、たがいの現実の味をたしかめようと必死で舌をからませた。

もう、ほかのことなどなにも考えられなかった。

呼吸なんてすっかり忘れるくらいだった。
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