キスはおとなの現実の【完】
土曜日の居酒屋は、それほど混んでいなかった。
客のいりは70パーセントというところか。
入口からざっと眺めただけでも空席がちらほら目立つ。

店内にわたしがはいるとすぐに、制服を着たアルバイトの店員さんが近づいてきた。
まだ高校生くらいだろうか。
派手でも地味でもない女の子。

「おひとりさまですか」

顔には満面の笑みが揺らぐことなく固定されている。

どうしてこの子は、こんなに傷つくことをいうのだろうか。
わたしは、待ちあわせですといってあたりを見まわす。
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