キスはおとなの現実の【完】
それにくらべ、わたしはどうだ。

自分のかっこうを再度確認してしまう。

全身を飾っているサクラにくらべ、わたしは地味なうえ貧乏くさいグレーのスーツを皮膚のように身体に貼りつけているだけだった。

こんなかっこうで合コンにきたことをはげしく後悔したが、いまさらどうにもしようがない。

わたしはぴんと背筋をのばし、集団のいる座敷席に近づいた。

頭数をあわせるだけで、さっさと帰ろう。

そんなふうに心に決めて。
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