キスはおとなの現実の【完】
座敷席はサクラのいうとおり、お世辞にも広いとはいえない空間だった。

個室ではないが、ほんのちょっとボックス席から隔離されたプライベートなスペース。

メンバーは、わたしをいれて五対五の合計十人。
横に長い一枚板のテーブルに、男女わかれてむかいあって座っている。
感じとしては、ぎゅうぎゅう詰めだ。

テーブルしたの足もとは、掘りごたつの体裁で足がのばせるようになっていた。

まあ、これだけ人口密度が高ければ、おもいきり足をのばすことはできなそうだが。

きっと遠慮しながら座らなければ、むかいあった男の子と足がもつれて、ぐりぐり重なり、ぐちゃぐちゃからまる。

座敷にあがると、サクラのとなりの一番入口に近い場所に着席した。

誰にもぶつからないよう、かちこちに身体を緊張させて背筋をのばして肩を張る。

もうすでに、のみ会ははじまっているようだった。

それぞれが、お通しとビールのジョッキを目のまえに持っている。
料理はまだ運ばれていない。
乾杯と自己紹介までがすんだあたりというところだろうか。
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