キスはおとなの現実の【完】
サクラのほかには、まだペアはできていないようだった。

残りの男四人と女三人は、一箇所に落ちつかず、ついたり離れたりしながらたえずポジションを変えている。

まるでヨーロッパあたりの優秀なクラブチームのサッカーの試合でも見ているようだった。
そんなの一度も見たことないけど。

ベンチいりもしていない観客のわたしは、最初の位置から一歩も動かず、ケータイ電話に視線を落とした。

こんなときの空気は重く、時間はぜんぜん進まない。

たまにわたしの近くにも男の子がビールジョッキを片手にやってくることがあったが、わたしとなんかじゃ会話もはずむことはなく、すぐに移動していった。
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