キスはおとなの現実の【完】
アパートから離れ、商店街を歩いていると見覚えのある車が道の先に停まっていた。
こちらにお尻をむけている。

白のヴァンで車体の横腹には店名のロゴ。
円のなかに三本ライン。

昨日の業者の車だった。

カーゴルームのドアがひらいて、カズトという男の人が荷おろしをしている。

わたしはすっぴんとスウェットで外出したことを後悔した。

たとえわずかでも顔を知っている人間に、こういうみっともない姿を見せるのは極力避けたい。
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