星夢物語
食事が終わると一目散に部屋へ戻り、雷が落ちない間に片付けを実行に移すことにした。
元々ここは幼少の頃から高校まで、母が使っていた思い出ギッシリな部屋らしい。
今でこそ娘の私が散らかし放題にしてしまっているが、母はおばあちゃんに似ているせいかとても綺麗好きなので
この有様を目撃されたらきっと雷どころではないだろう。

あぁ、私にも掃除力ちょうだい。。。


せっせと手足を動かしていると、どこかから聞き覚えのある声を耳が捉える。
近くの部屋からゴーゴーと大きなイビキ・・・どうやらおじいちゃんのようだ。
お!と何かを閃いたのか、掃除の手を一旦とめてソロ~リと寝ている彼へと忍者のように忍び寄っていく。


「おーじいちゃーーーん?」


小さな声で耳元でささやいてみるが、どうやら熟睡している様子。
しめた、といわんばかりの表情でおじいちゃんの額の1センチ手前で左手を止め、その手に意識を集中させる。


「見えてきた見えてきた♪これは・・・本を読んでるの?」


それはとても不思議な力
杏恋自身この力を自分の意思で使えるようになったのは最近のこと。
人の夢を見れて、自在にその夢の世界へ意識のみ出入りできる不思議な力があるのだ。

この力を誰かに話すことはない。
めんどうを嫌う性格から、こっそりと趣味の範囲程度でしか行わないし、言いふらして他人に自慢する気もないからだ。
話したところで信じてはもらえないだろうし、仮に信用してくれても気味悪がられる可能性大。
人の夢が覗けるなんて、私がされたら嫌だもん。


それでも今は覗いちゃってるんだけど。
好奇心という力は恐ろしい。
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